さまざまな任意整理
「本業以外には深入りするな」という伝統がTにはあったためである(これはカード事業でも同じだ)0だが、グローバリゼーションが進むなかで、環境は激変している。
特に本業の自動車業界での通信の占める位置はますます大きくなってきた。
21世紀には高速道路の自動料金徴収システムをはじめ、自動走行やマルチメディア化が現実のものとなる。
そうしたシステムを (高皮遺路交通システム)と呼び、それをなし遂げるには、情報網が不可欠になってきたのだ。
約50兆円の新規需要が生まれるとまでいわれている。
そのために、Tは地図ソフト大手のゼンリンに資本参加したり、カーナビシステムを通じて交通情報を提供するTメディアステーションを設立したり、さまざまな手を打っている。
そうした事業のインフラとして、Tの資産である道路沿いに敷設した光ファイバーはなくてはならないものである。
そのために、Tでは、Tを中核会社と位置づけ、同社が資本参加しているIDOなどをからませた総合的な通信事業、の参入をはかろうとしているのだ。
T首脳陣は97年春に建設省の高官を訪ねて相談をしている。
建設省はTの実質的な大株主≠セったからだが、その際、KDDを中心としてT、DDIの3者合併を模索するといった方針で合意したともいわれている。
しかし、T社内にはDDIとの合併には消極的な意見もあり、この話はすんなりとは進まなかった。
状況が動きだしたのは97年9月に入ってからだWQQとDDIとの話し合いが不調に終わりそうだと見て、T・O社長らは、KDDに積極的なアプローチを始めた。
97年11月、KDDはTとの合併を選択した。
株式市況はこの合併に敏感に反応し、KDDの選択を好感して歓迎ムード一色となり株価は売買停止になるほど急騰した。
発表された契約内容によるとKDDが合併後の存続会社となり、Tは筆頭株主に納まる模様だ。
合併後の年間売上高はSと同等規模になる。
合併比率や今後の人事を決めるための「合併準備委員会」を発足させ98年春には合併契約に正式調印が予定されている。
一方、最後に残ったIDCはといえば、こちらも97年12月8日にNTTとの提携に合意したと発表した。
具体的には、NTTが自ら新設した国際通信子会社とIDCが提携するものだが、将来は、資本面も含めて関係強化がはかられる予定だ。
IDCとすれば、KDD同様、国際通話料金の値引き競争で収益は大幅に悪化しており、KDDがTとITlがNとそれぞれ合併することを知って孤立感を深めていた。
そこで、設立当初に技術協力を得て関係が深かったNTTとの提携に向かった。
その交渉も2〜3年前から断続的に続けられていたものらしい。
NTTはこれまで、国際進出は「自前で資材を調達し、ノウハウを蓄積してやる」と言い続けてきたが、世界の情勢はそんなことを許してくれるほど甘くはない。
日本発のインフラを整備しノウハウを蓄積している間に、世界の流れから置き去りにされることは目に見えている。
そこで、すでに世界各国との関係があり、インフラやノウハウを持っているIDCと組むことで一刻も早い国際通信分野、の参入を果たし、世界の通信事業者との戦いに備えようとしたのだ。
このように、NTTの再編を前に、国内の通信業界はNTT、新生日本テレコム、新生KDDの3つのグループにまとまることで一応の形を整え、世界との戦闘準備体制を整えたといえるだろう。
しかし、こうした再編劇のなかでもカードはどうやら生き残り続けている。
現在、KDDカードは20万人以上の顧客を集めた。
一方のIDCカードは10万人程度の顧客を集めている.特にIDCはキャンペーンを行うなど会員倍増計画を推進中だ。
こうなると、NTTグループカードとIDCカードの関係が気にかかるがIDCの阿部課長補佐は、次のように述べている。
「確かに、NTTとの提携は決まったが、今はまだお見合いの状態で、カード機能の完全な合併にはまだまだ時間がかかる。
当面はNTTカードとIDCカード双方のメリットが最高に生きるようサービスを整備したい。
QOカードにNTTの国内サービスを取り入れるか、逆にNTTカードにIDCの国際機能を付加するのか、そのあたりの内容を今後は検討することになるだろう」いずれにしろ、この通信業界のサバイバル戦争はこれからもさらに激化する。
その時にカードは底力を発揮してくれそうだ。
カード会員になった人たちは、忠誠心に富む優良顧客が多いため、合併するにしろ吸収されるにしろ、新しい会社のなかでもその顧客はコアとなって支えてくれる逆にいうと、合併相手先は、カード会員の顧客データを合併条件に掲げてくるようになるだろう。
そのデータがいかに多く、いかに詳細かによって相手企業を値踏みするという時代が到来しつつある。
ちなみに、IDCによって「3匹目のどじょう」と呼ばれたITJは、新生日本テレコムが発行する「日本テレコムカード」の中で国際電話割引サービスを受け持つという形でカード業務を展開している。
96年10月4日、空は薄曇りであったが、新宿駅南口には爽やかな秋風が吹き渡っていた。
この日は、「今世紀首都圏最後の大事業」といわれるT新宿店がいよいよ開店する日だった。
午前10時の開店を待ちかねた徹夜組50名を含めた1万人余りが、すでに長蛇の列をつくっていた。
見上げれば、T新宿店の入る14階建ての本館と8階建て別館が、秋空にくつきりとシルエットを刻んでいる。
本館にはTの他に東急ハンズやcD専門のHMVなどの大型専門店が入り、別館には紀伊国屋書店が入って、「タカシマヤ・タイムズスクエア」と呼ばれる全売場面積8万平方メートルの一大商業施設ができる予定でした。
その出店は新宿の商圏地図を大きく塗り替えると期待され、新宿に店舗を持つ既存百貨店にとっては重大な脅威と映った。
Tは以前からハウスカードを発行しており、それまでに200万枚の発行実績を持っていたが、新宿進出を前に「クレジットカードでできるだけ多くの顧客を取り込み、囲い込もう。
それも若者を多く」(T広報部)と、リニューアルが決定した。
T事業統括部・M課長が上司の命令で作業に取りかかったのは95年秋。
それから社内の有志とプロジェクトチームを組織、日夜リニューアル作業に没頭してきた。
5月16日にやっと新「タカシマヤカード」の発行にこぎつけ、それなりの手応えをつかんでいた。
だが、いよいよ自分たちの仕事の成果が問われると思うと、前の晩はなかなか寝つかれなかったという。
ごった返す人の波のなかで、カードカウンターには、次々に若者がやってきてはカードの申込みをしていく。
「タカシマヤカードはいかがですか」と呼びかけると、その名前はずっと前から知っているといわんばかりに、まわりの客が振り返った。
JCB、Sクレジットと提携する新タカシマヤカードは、デパートカードでは初めてのポイント制を採用する画期的なカードであった。
それまでは景品表示法の規制があって、百貨店ではポイントサービスは認められなかった。
それが96年4月から緩和になり、7%という業界でもトップクラスの割引率を採用できた。
また、カードフェイスも若者向けにニューヨークの女性アーティスト、ジーン・フィッシャーによるデザインを採用した。
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